ユーグレナ・出雲社長に学ぶ「イノベーションを起こすための必要条件とは?」

lifecareerup

2015年11月29日 09:07

高度専門職人材の育成を目的として、東京都が設置した専門職大学院である「産業技術大学院大学」が、創立10周年の節目を迎えたということで、記念シンポジウムが都内で開催されました。

「気鋭の起業家がベンチャー起業を成功へと導く秘訣を語る!」をテーマとして掲げた本シンポジウムでは、記念講演の登壇者が非常に豪華ということもあり、時間を調整して聴講してきました。

登壇者は、株式会社ユーグレナの代表取締役社長である出雲充氏、そしてサイボウズ株式会社の代表取締役社長である青野慶久氏のお二人でした。

いずれもベンチャー企業からスタートし、一代で上場まで上り詰めた気鋭の起業家であり、まさしくテーマどおりの講演者。

まずは、ユーグレナの代表 出雲氏の講演からレポートしたいと思います。




出典:http://midorimushiwiki.com/midorimushi1/midorimushi1-00







「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。」




平凡な家庭で育った僕が、ベンチャー起業の社長になったワケ。

私はごくごく一般の、中流で平凡な家庭で育った。

東京の多摩市にある「多摩ニュータウン」というところが、私の生まれ育った環境だ。
父はソフトウェアのエンジニアをしているサラリーマン、母は専業主婦、そして弟という4人家族。

私の理解では、多摩ニュータウンというところには、社長や芸能人、スポーツ選手という職業の人はあまり住んでいないと思う。

だから、今まで一度も会ったことのない人種に、憧れは持っていなかった。

そういった人たちは、自分の生活とは何も縁のない存在だと思っていたし、ましてやそうなりたいなんて思ってもいなかった。


そんな私が、ミドリムシに目覚めて会社を起こし、ベンチャーの社長をするということになった。

それには、大きな転機があった。
大学に入って初めて海外に行ったときだった。

初めて行った海外の国は、バングラデシュ。

人口が1億5,500万人と日本よりも多い。
しかし、国土は北海道の2倍くらいと小さく、その中で生活している。世界で最も人口密度が高い国である。

一人当たりの所得が1ドル。およそ100円くらい。年収にしても3万円〜4万円程度。
世界でも貧しい後発開発途上国の1つがバングラデシュである。

そこで1か月生活したのだが、当初のイメージでは、その国で生活している人々は貧困に苦しみ、食べ物にも困っていると思っていた。

しかし実際は、お腹が空いて困っているという子供は一人もいなかった。


ただ、食事は毎日大盛りのカレーライスだけ。しかも具は豆のみ。
カレーに定番の人参やじゃがいも、お肉などは一切入っていなかった。

炭水化物以外の、肉、魚、卵など動物性たんぱく質や野菜、フルーツなどが不足していたのだ。


問題は、空腹ではなく「栄養失調」だった。



帰国して食べ物についていろいろ調べた。
途上国ではありとあらゆる栄養素が不足している。できるだけ少量でたくさんの栄養素が詰まっているものがいい。

そういう素晴らしい食材を日本で探して、バングラディシュに持っていきたいというのが出発点となった。

そこで出会ったのが、「ミドリムシ」である。


一般的に植物が持つ栄養素と動物が持つ栄養素、両方を併せ持つ生物はほとんど存在しない。
ところが、ミドリムシは植物と動物の両方の性質を持つとても珍しい生き物だということが分かった。


「ミドリムシで栄養失調の問題が解決できる」と考えた。


さらに、ミドリムシから油を作ることができ、それは飛行機に使える。
原油からジェット燃料は作れるが、一般的な植物油からは飛行機の燃料は作れない。

石油ではなくミドリムシで飛行機を飛ばすことができれば、日本がエネルギー輸出国になる可能性だってある。



その後、大量培養の方法など様々な課題に直面したが、研究の結果、世界で初めて屋外で大量にミドリムシを育てる技術を開発し、その施設を沖縄県・石垣島に設けた。





2年間断られ続けて…、501社目の会社と出会う。

ミドリムシの大量培養に成功した後、商品化を踏まえて様々な会社にミドリムシの売り込みを行った。しかし、会う人、会う人、みんなにことごとく断られ続けた。


必ずと言ってもいいほど聞かれるのはこの質問だ。


「他社での採用実績や取引状況はいかがか?」


そもそもミドリムシを商品化するということは前例もなく、まだ取引のある会社は無いと正直に答えると…。


「前例が無いのであれば、稟議を上げることは出来ない。他社が買ったらまた話を持ってきてくれ」と一掃された。


確かに新しい分野の話であり、なかなかスムーズにいかないことは最初から分かっていた。

当初、事業計画書で立てていた目標としては、100社に案内して1社が買ってくれたら達成といった基準のものであった。


しかし、2年間で500社に営業し、提案し続けたが結果は「ゼロ」だった。



そうこうしているうちに、会社も回らなくなってきた。
あと数か月で資金は尽き、廃業せざるを得ない状況までにきていた。


そんなタイミングで、ある会社から「興味があるので話を聞きたい」との連絡が入った。

どうしても最初に聞いておきたいことがあった。

「話はしてもいいですが、先に聞いておきたいことがあります。
あなたの会社はこれまでどこの会社も買ったことの無い商材を買ったことはありますか?」


担当者はこう答えた。

「うちの会社は、そういった珍しい商材もよく買うよ。」



最後のチャンスだと思い、半年をかけてアプローチし続けた。


提案を何度も練り直し、最終的に役員会でGoサインを得ることが出来た。

その会社は商社大手の「伊藤忠商事」さんだ。

営業を続けて、501社目の会社であった。




ミドリムシ、これは聞いたことがないから●●だ。

伊藤忠商事を通して商品を販売することとなった。

私が販売するミドリムシと、伊藤忠商事で販売するミドリムシはまったく一緒。

でも、私のものは1個も売れなかった。
しかし、伊藤忠商事ではバカ売れした。


その後、ENEOSやANA、ファミリーマートや日立といった大企業がどんどん手を上げていき購入していった。


苦しいベンチャー企業は、一番最初に手を差し伸べてくれた会社を絶対に忘れない。


その後、2012年12月に東証マザーズに上場、そして2014年12月には、大学で始まったベンチャー起業として、日本の歴史上初めて東証一部に上場した。


10年前に3人で1000万円で始めた会社は、本日(11/27)午前の終値の段階で、1,400億円の評価を頂戴している。



他の500社と伊藤忠商事とでは、何が違ったのか。

これまでの500社ではこう言われた。

「ミドリムシ、これは聞いたことがないからリスクだ。」


しかし、伊藤忠商事は、こう言った。

「ミドリムシ、これは聞いたことがないからチャンスだ。」



これからの日本と、そして若者が取り組む新しいベンチャー企業をお支えしてくださるのにふさわしい大企業の視点は、いずれであろうか。

言わずもがな後者であることは分かるであろう。




「1番にこだわる。」

ベンチャー企業側にも、イノベーションを起こし、成功させるための条件がある。

それは「1番にこだわる」ということ。

日本で1番高い山は「富士山」、1番大きい湖は「琵琶湖」、そして世界で一番大きい国は「ロシア」だ。


では2番はどうか。

日本で2番目高い山は「北岳」、2番目に大きい湖は「霞ヶ浦」、そして世界で二番目に大きい国は「カナダ」。

一般的にはなかなか答えられないのではないか。


グーグルでもヤフーでもいいので、「富士山」と「北岳」でそれぞれ検索をかけてみてほしい。

そうすると、「富士山」は約26,500,000件ヒットする。
一方、「北岳」は約582,000件だ。

この差は歴然である。


皆さんは富士山だからこそ、お金を払って登りに行く。
しかし、北岳にはお金を払ってまで登りに行く人はどれだけいるのだろうか。


皆さんがプロとしてされているビジネスは「富士山のビジネス」、「北岳のビジネス」どちらだろうか。

「2番」ではこの世に存在しないのと同じことだ。
競争している限り、「1番」でないと意味がない。




「1番になるために必要なものは?」

では、1番になるために必要なものは何なのか。

「お金」なのか、「才能」なのか、それとも「特別な教育」?
はたまた「コネ」なのか。

「私はお金がないから、一番になれるわけない」、あるいは「才能がないから」「教育が十分でないから」「コネがないから」。

このように考える人がどれだけ多いことか。

しかしお金があっても、才能があっても、教育が十分でも、コネがあっても、一番になれない人はいる。

つまり、これらのものは「1番になる」うえで必要不可欠ではないということだ。



では何が必要か。

例えば「成功率が1%」の挑戦があったとする。

たとえ、成功率が1%であったとしても、2回挑戦したら成功率は1.99%(※)となる。
(※)1.99%=1−(0.99の2乗)

3回挑戦したら成功率は2.9701%になり、4回目は3.940399%、5回目は4.90099501%と成功率が上昇する。

そして50回目になると39.4994%と、成功率は3分の1に、100回挑戦したら63.3968%と成功率は3分の2まで上がる。


459回目で数字が逆転する。


1度やって成功率が1%であるということは、459回やって成功率が99%ということと同じことなのだ。


次の式のとおり、試行回数に科学技術をかけ合わすことで、奇跡やイノベーションを起こすことができるのだ。

試行回数 × 科学技術 > 奇跡(イノベーション)



世の中、いかに繰り返すことなく、成功を求める人が多いことか。

私はお金持ちでもないし、特別な才能も、教育も、コネクションも持ち合わせていない。


伊藤忠商事にたどり着くまでに501回の営業をした。

そして、大量培養のために1,000回以上の実験をした。

それは私がすごいのではなく、1,000回実験して失敗した人がこの世に一人もいなかったということだ。



私は試行回数と科学技術の組み合わせで、誰でもみなさんにも必ず奇跡とイノベーションを起こせると確信している。


私には2020年までにANA364便(ミドリ・ム・シ)で、ミドリムシをつかったジェット燃料で、羽田から培養施設のある石垣島行きの旅客機を飛ばしたいという夢がある。

459回で成功しなければ、460回目にもちろん挑戦する。皆さんも目標に向かって挑戦し続けてほしい。







まとめ・感想

出雲氏の講演は初めて聞きましたが、話が進むにつれてどんどんと引き込まれていく、とても魅力的なプレゼンでした。

ご自身の経験から裏付けられたイノベーションの法則を熱く語ってくれた姿は、まさにベンチャー起業の経営者といった感じであり、「挑戦」といったキーワードを改めて深く考えさせられた機会でした。

僕も含めて、私たちは「成功」を簡単に手に入れようとして、中途半端な努力で「諦め」を選んでいます。

「継続し続けること」こそが、本当の意味での「挑戦」なんだと実感しました。



このブログは、今回で274記事目となります。

イノベーションのかけらもないブログですが、成功率99%とある459回までは、まだまだ185記事も足りません。


こんなんで、何かを変えたいと大口叩いても何も変わりません。


毎日の積み重ねで、僕はイノベーションを起こしていきます。





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