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2015年11月30日

サイボウズ・青野社長に学ぶ「個性の経営 〜イノベーションを生み出す〜」


高度専門職人材の育成を目的として、東京都が設置した専門職大学院である「産業技術大学院大学」が、創立10周年の節目を迎えたということで、記念シンポジウムが都内で開催されました。

「気鋭の起業家がベンチャー起業を成功へと導く秘訣を語る!」をテーマとして掲げた本シンポジウムでは、記念講演の登壇者が非常に豪華ということもあり、時間を調整して聴講してきました。


登壇者は、株式会社ユーグレナの代表取締役社長である出雲充氏、そしてサイボウズ株式会社の代表取締役社長である青野慶久氏のお二人でした。

いずれもベンチャー企業からスタートし、一代で上場まで上り詰めた気鋭の起業家であり、まさしくテーマどおりの講演者。



前回は、ユーグレナの代表 出雲氏の講演をレポートしました。

ユーグレナの出雲社長に学ぶ「イノベーションを起こすための必要条件とは?」


今回は、もう一人の登壇者であるサイボウズの代表 青野氏の講演をレポートします。


サイボウズ・青野社長に学ぶ「個性の経営 〜イノベーションを生み出す〜」





サイボウズ・青野社長に学ぶ「個性の経営 〜イノベーションを生み出す〜」



サイボウズ・青野社長に学ぶ「個性の経営 〜イノベーションを生み出す〜」



「個性の経営 〜イノベーションを生み出す〜」




チームあるところサイボウズあり

世間からは「サイボウズ社長の青野」ではなく、「子供3人、3度の育児休暇を取得した社長の青野」で注目されている。

今年1月に第三子が誕生したが、半年間は毎日16時退社し、上の子たちの保育園のお迎えをしていた。
今でも定時退社を続けている。

サイボウズという会社は、「グループウェア」の開発・販売・運用を通して、効果、効率、満足、学習を高めることで、チームワークの向上を目指している会社である。
グループウェアで一番使われている会社は、グーグル社やマイクロソフト社を抑えて、サイボウズがトップであるということはご存知だろうか。

サイボウズは、単にグループウェアを作って販売するような会社ではない。
「チームあるところサイボウズあり」を全社スローガンに掲げ、世界中のチームワーク向上に貢献することを目的としている会社である。

そして、売り上げや利益よりも「利用者率」にこだわり、世界中で使われる製品・サービスを目指している。


また、世の中のチームワークを啓蒙する活動に力を入れており、2008年より「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」を開催している。
2015年のベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、「ラグビー男子日本代表チーム」が受賞した。


その他、最近では「ワークスタイル動画」を作成し配信している。
都会のワーキングマザーが置かれた厳しい状況について問題提起をする動画「大丈夫」を製作し配信したところ、140万回を超える再生回数となった。


注目のワークスタイル動画「大丈夫」はこちら!






サイボウズとはどういった会社なのか、いったい何がしたいのかと感じた方も多いと思う。
私たちの会社のテーマは”チームワーク”であり、この「チームで働く」ということを進化させていく必要性があると考えている。




「個性」を重視する経営へ

創業時は、ITベンチャーにありがちな一攫千金体質で、土日も夜も関係なく働くといった企業風土であった。
創業から丸3年で東証マザーズに上場するところまでは順調に進んできたが、それ以降、苦しい状況が続いた。

離職率がずっと高止まりしていて、ピーク時には28%までに達した。4人に1人は1年後にはいないという状況だ。
さすがにここまで離職率が高まると、経営するうえで効率が悪い。

ITベンチャーで働いているので、みんなガツガツ働きたいものだと思っていた。
しかし、それは違っていた。

家庭を持って子供を育てたい、趣味の時間も大切にしたい、働く時間に制限があるなど、いろいろな思いを持っている人がいることがわかった。

モチベーションのポイントは人それぞれ違う。
モチベーションは、「一人ひとりの夢」であるのだ。


そこで方針を変えることにした。
一人ひとりがモチベーションを高められるように、それぞれにカスタマイズした、パーソナライズされた人事制度を作ったらどうかと考えた。


それが「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」という人事制度の方針だ。


従業員一人ひとりの個性が違うことを前提に、それぞれが望む働き方や報酬が実現されればよいという考え方で、公平性は捨てると決めた。

その方針を掲げて取り組んだところ、離職率はピーク時の28%から4%まで低下した。




「人事部感動課」

「人事部感動課」というセクションがある。
人事部なのに採用もしなければ育成もしない。
社内のイベントを運営し、多くのモチベーションを生み出し続けることを目的としたセクションである。

これまでもシステム稼働時に祝賀会といった社内イベントを開催していたが、みんな片手間での企画および参加であったため、中途半端なものとなっていた。

「人事部感動課」の新設により、社内で感動を生み出し、モチベーション向上に寄与することにつながっている。


「皆さんは職場で感動していますか?」

人間は本来感動好きだが、それを得るために働いてお給料を貰って、このお給料を使って映画館で映画を観たり、本を買ったりして、”他人の話”によって感動をしている。

これって、ちょっと残念なことではないか。
せっかく自分たちの職場にたくさんの感動の源があるにも関わらず、それを見ずして”他人の話”で感動を満たしているなんて。



ワークスタイル変革の要件は、以下の3つが挙げられる。

ツール:情報共有クラウド、遠隔会議、セキュリティ、リアルオフィスなど
制度:在宅勤務、人事評価と給与、育児休暇、採用・退職、副業など
風土:多様性重視、個性の尊重、率先垂範、議論など



その中でも「風土」が重要となる。

風土を変えるためには、トップが推進者となって進めていく必要が有ある。
そのため、自ら育児休暇を取得した。




育児休暇を取得して学んだこと

私自身はもともと育児・家事を頑張るようなタイプではなく、ITとベンチャーが大好きで、朝まで働く、夜は目が閉じるまでパソコンに向き合うというくらい「仕事大好き人間」だった。

しかし、それでは風土は変えられないという思いもあって、自ら育児休暇を取得することとした。

2010年2月 長男誕生:2週間の育児休暇を取得
2011年12月 長男誕生:半年間、水曜を育休日に
2015年1月 長男誕生:半年間、16時に退社



育児体験から学んだことは、私にとってとても大きなものだった。


①「自分の父性の存在」
自分の遺伝子スイッチが作動
まさか自分が子供の写真を職場に飾るとは…


②「育児は大変」
24時間365日、いつ呼び出しがあるかわからない。
超重労働かつ失敗できないプレッシャー


③「育児は大切」
子供が育たないと市場が縮小するという事実
育児は市場創造。仕事より大事。人類の未来創造。




もし、育児休暇を取る前の自分に、「仕事と育児、どちらが大事ですか?」と聞かれたら、たぶん「両方大事です。」と答えていたと思う。

しかし、今は「育児の方が仕事よりはるかに大事だ。」と答える。

なぜならば、「育児をしないと市場が成り立たない」からだ。

商売人は育児をしてくれている人のおかげで成り立っている。育児を重視しなければ市場は成り立たないのだ。


そうであるにも関わらず、この国は「働く人の方が偉い」といった考え方や風潮が根付いている。

「育児は人類最大の仕事だ」と気付かされたのだ。


少子高齢化が一向に改善されない理由として、私は次の通り結論付けた。

今、政治や企業のリーダーにいる人たちは、家庭を顧みずに働いてきた世代である。
そのため、育児の大変さや大切さに気付いていない。

「会社で必死に働くことが社会のためだ」と信じ込んで、これまで生きてきている。


これらの反省を踏まえて「イクボス化」に期待している。




まとめ

今日お話させていただいたのは、「個性を尊重する」という新しい組織マネジメントである。

働き方の多様化を進めるのは、「ツール」「制度」「風土」の3つの変化が必要である。

また、社内の多様性は、イノベーションが生み出されやすい環境を作る。そして、社外との接点が増えることで、オープン・イノベーションが発生する可能性が高まる。


サイボウズ・青野社長に学ぶ「個性の経営 〜イノベーションを生み出す〜」





感想

サイボウズのグループウェアは、私も以前から使用しており、イベントの企画・運営の際にはフル活用しています。
また、イクメンの代表として知られている青野氏のワークスタイルにも非常に関心がありました。

ところどころに笑いを入れて進めていく講演スタイルは、青野氏の人柄が出ていてグッと引きつけられるものがあり、また、経営面ではワークスタイルの変革を体現され、学ぶべき点も多く、特に「育児は人類最大の仕事だ」と言い切るところに共感を得ました。

一見、理想像に見えてしまう経営スタイルですが、裏では綿密な制度づくりや風土醸成がなされているのではないでしょうか。

僕も3人の子供の親であり、ワークスタイルにも様々な工夫が必要であると考えている身として、この学びを単なる「知識」で終わらすことなく、「知恵」として現場で活かしていきたい、そう感じた講演でした。




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Posted by lifecareerup at 23:55│Comments(0)■Report(レポート)
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